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主張/リスクマネジメント(上)

プロティビティジャパン社長・神林比洋雄
(日刊工業新聞 10/20 27面 掲載記事)

PDFをダウンロード 最近、会社法の改正、金融庁の内部統制報告制度、個人情報保護法の施行等、内部統制・リスクマネジメントにかかわる様々な法制化が進んでいる。ここで内部統制とリスクマネジメントの関係を簡単に定義しておきたい。企業にはその存立目的があり、目的達成に向け様々な戦略を策定する。その戦略実行の結果が上振れ、下振れ双方の意味において思い通りに行かないかもしれない。この不確実性がリスクなのである。

 そのリスクを経営者の許容範囲にとどめ、想定通りの成果を上げるために構築される仕組みが内部統制である。戦略があればリスクがあり、リスクを受け入れるのであれば、内部統制は不可欠の仕組みとなる。

 つまり、内部統制は転ばぬ先の杖(つえ)といえる。米国COSO(トレッドウェイ委員会)の定義でも、内部統制とは目的の達成に関して「合理的な保証」を提供するものであり、従って絶対的な保証ではなく、あくまでも目的の達成を合理的に支援するものである、とされている。つまり“杖”があっても転ばないことを100%保証するものではないが、相応の“杖”があることにより、転ばないということを合理的に保証することが可能になるということなのである。

 企業がその目的を達成し、人々が安心して、安全に社会生活を営むことを合理的に保証するためには、社会環境に相応の“杖”はあらゆる場面で不可欠になる。不祥事は相応の“杖”を持たないがゆえに、あるいは意図的に“杖”を自ら放棄するがゆえに発生する。環境の変化に相応の杖を常に持ち続ける上でトップの責任は極めて重い。

 最近、意図的としか思えない不祥事が頻発している。そのため、本来は法人が自ら律すべき内部統制やリスクマネジメントのあり方について、しっかりとした杖を作り続けることへの法的義務が強化されている。これは、市場の安定化や経済のグローバル化に対応すべきという点からは受け入れられるものである。しかしながら、企業がその本来の経営のあり方を検討する上で、法対応にコストをかければいいというものでもなく、法対応を目的化してもいけない。企業目標の達成のため、何が最も合理的なのか常に追求する姿勢を堅持しなければならない。

 刻々と変化するリスクへの挑戦に終わりはない。明日のリスクはますます見えづらくなってきている。企業が戦略の達成へのより確かな合理的な保証を確保し、持続的成長を果たすためには、リスクシナリオを適時に見直し、その対応を一瞬たりとも怠ってはならない。まさに備えあれば憂いなしである。

「主張/リスクマネジメント(下)」はこちら

【略歴】かんばやし・ひよお 75年(昭50)慶大経卒。76年アーサーアンダーセン東京事務所入社。朝日監査法人(現あずさ監査法人)代表社員、アンダーセンボードメンバー等を経て03年からプロティビティジャパン社長。公認会計士、多摩大大学院客員教授。和歌山県出身、57歳。

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