プロティビティ

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主張/リスクマネジメント(下)

プロティビティジャパン社長・神林比洋雄
(日刊工業新聞 10/27 27面 掲載記事)

PDFをダウンロード 経営者は、企業の社会的責任(CSR)への取り組み、ガバナンスの強化、内部統制の構築等を通して、企業倫理と経営の透明性を確立し、説明責任を果たすことが様々なステークホールダーから要請されている。企業は、それぞれが置かれている経営環境をよく把握し、持続的成長の機会または脅威となる不確実性をどう管理していくのか、今、厳しく問われている。

 変化するリスクに的確に対応しながら、企業目標を達成し、ステークホールダーの期待に応え、持続的成長を果たすことを合理的に保証する、魔法の杖(つえ)がある。それは、エンタープライズリスクマネジメント(ERM、全社的リスクマネジメント)である。複雑化するリスクシナリオを描ききり、的確な対応を図る上で、ERMの果たす役割は極めて大きい。

 ERMは無論一夜にして構築はできない。ERMは各企業・組織にとって固有の仕組みであり、その個性や社風を生かして作り上げていくもので、他社の取り組みをそのまま、まねをしても、魔法の杖は思い通りには動かない。企業それぞれの受け入れるリスクは様々であり、組織として受け入れることのできる能力も異なるからである。

 そこで、まずどのようなリスクを受け入れるのかを明確にする必要がある。企業理念、経営戦略の達成に大きな影響を与えうるリスクを、全社網羅的に把握し、そのリスクの大きさ、発生可能性を評価することが第一歩となる。重要リスクを選別し、そのリスクを回避するのか、低減、共有、受容もしくは活用するのかを決断しなければならない。

 受け入れると決めたリスクに対しては、本来必要とされるリスク管理能力と現実の仕組みを比較し、そのギャップの洗い出しが不可欠となる。ギャップが大きければ、新たな仕組みを構築するなり、新たな部署を設けるなりして、必要な能力を確保することになる。

 必要な仕組みを持たずして、リスクだけを受け入れるのは、海図を持たずして航海に出るようなもので無謀というほかない。食品にかかわるビジネスを行う企業においては、安全・安心というリスクに対して最高レベルのリスク管理能力を構築していないとすれば、法的責任を問われることは当然として、もはや市場取引を行う資格もないであろう。

 さらにモニタリング機能を一層強化する必要がある。経営者は刻々と変化する経営環境やリスクに対して、企業が想定どおりに内部統制が機能しているかどうか、内部監査機能を充実させ、タイムリーに確認を行うことは、今や最大の経営課題の一つとなっている。

 戦略に組み込まれたリスクとリターンを明確にし、経営の透明性を高め、説明責任を果たす上で、ERMは頼もしい支えとなる。従って、ERMはトップダウンで推進されなければ効果はない。ERMは経営者の心の中にあるのである。

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